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#5

USPのある時代、ない時代。広告の概念は、どう変化する?

2020.2.26

クリエイティブやマーケティングの現場で、USPという言葉をよく耳にする。これは昔からある広告マーケティングの基本概念 “Unique Selling Proposition” の略で、言うなれば「差別化される売り」あるいは「独自性を持った売りの提案」ということになろうか。このUSPは、1960年代にアメリカのコピーライター、ロッサー・リーブス氏によって提唱され、50年以上経った現在でも、企画をするときなどの重要な概念として、多くのクリエイティブやマーケティングに活用されている。

たとえば、代表的なUSPとして、M&Msチョコレートの「お口でとろけて、手にとけない」がよく上げられる。チョコをコーティングすることによって、いままで手で溶けていたものが溶けず、手も服や床も汚さず食べられることを、ひと言で表現している。近年ではアップルやダイソンもそうだ。
このような、確固たるUSPを見つけることは、企業活動に関しても重要なことであると言える。


しかし、USPが役立たない、あるいは、存在しない時代が到来したら。これは、よく言われることだが、高度消費社会となった現代、もはや商品に確固たる差別性を見いだせなくなった。たとえば一般的なビール。それは、ほとんど成分的にもおいしさ的にも変わらない。タレントが「おいしい!」と連呼するだけだ。そこに「独自性を持った売りの提案」というのは、もう存在しないのである。

そこで、クリエイティブ、マーケティングのスタッフは考える。アイディアの基本となる概念はなにか?USPに変わる、新たな概念はあるのか?

そして、2000年前後の頃、生まれたのが、”Attitude”(アティチュード)だった。その企業に対する姿勢、商品に対する態度や体験というものを概念の基本に置いたのだ。こうやって、世界で、”Attitude” による広告が多く作られた。バドワイザーのカエルが登場し、「バド!バド!の(ように聞こえる)鳴き声」だけが続くCMなど、まさにそうだ。さらに、時代は変わると、”Inspire”(インスパイア)ということを世界のクリエイター、マーケターは標榜し始める。消費者をいかに感化できるか?感情を揺り動かせるか?ユニクロの初期の広告キャンペーンなど、そのカテゴリーに入るかもしれない。

そうして時代が移るごとに、基本となる概念にも流行というのが訪れる。
私は、その概念を生み出す、本質的価値を大切にしたいと考える。デジタルの発達、SNSの網羅によって、なんでもあからさまになってしまったこの現代、所有することによって、人より偉いとか、かっこいいとか、もう意味のないことだ。ネタバレの時代なのだ。
私は、人間の存在価値や存在証明は、社会とのつながりがそれを示すと考えている。これからは個のアイデンディティーが強まり、尊重され、より深く、より早く社会へインパクトをもたらすだろう。世界が変革を遂げようとするとき、その流れに自分も参画したい。いわゆる「社会ゴト」と連動した商品を買うことで、消費者は欲求を満たす。その社会感覚が価値を持つのではないだろうか、と時代の趨勢とともに考える。
つまり “Sociality”。社会と商品との新たな関係を見いだすこと、生み出すこと。そこにクリエイティブ、マーケティングの新しい概念の芽生えがあるような気がしている。
いや、むしろもう、既にそうなりつつある。

さて、みなさまは、どうお考えだろう。

株式会社クリエイティブアローズ
代表取締役 乳井 俊文